2008年3月11日火曜日

国際女性の日2008 勝間和代さん講演まとめ

本日「国際女性の日2008公開フォーラム「女性と女児に投資するということ」」を聞いてきた。会の趣旨やプログラムなどはこちら。勝間さんの講演もあるということで行って参りました。


会の狙いを粗くまとめますと「開発の余地と大きなポテンシャルを持つ女性に世界全体で投資していき、その結果世界を脅かす恐怖を恒久的になくしていくことを目指そう」ということだと思います。このテーマは国連で最も支持されているテーマの一つであり、アフリカには「男は村を守り、女は人類を守る」ということわざもあるということです。世界の各地にある文化や伝統というものは、一部はその仕組みそのものが女性に有害であるという側面があることから先進国、発展途上国どちらも解決すべき課題として内包しているものなのでしょう。


国際的なフォーラムでしたので、司会もレジュメも英語の部分が多かったです。同時通訳がつきまして、そのような講演会は初めてだったので新鮮でした。勝間さんは英語でやっても良いけど、日本語でっていうことで日本語で講演してくださいました。質疑応答の時に英語で質問された時には英語で回答されていたのですが、勝間さんの英語驚きました。もの凄い上手いです、これが実務に使える英語のレベルなのか。日本語よりもさらに主張が力強く感じられ、淀みなくかなりの速度で話されていました。いわゆる日本人カタカナ英語っぽくなく、いや、驚きましたね。


勝間さんのプロフィールも英語で記されていて、ちょっと珍しいかもしれないので転記します。それと簡単な英語ですけど、僕の訳を付けます。


Kazuyo Katsuma
CPA and Economist


Kazuyo Katsuma is a graduate of Keio University and holds an M.B.A in Finance from  Waseda University.She was the youngest person to pass the Japanese CPA exam(age19),and after working for a number of foreign firms in Japan, she has become an independent economist.Ms.Katsuma received the Avon Woman's Award in 2006, and was chosen by the Wall Street Journal as one of "The 50 Woman to Watch, 2005".She has writtena number of books, including Money Shouidn't Simply be Saved in Bank(ko-bunsha;in Japanese).





勝間和代 公認会計士 経済評論家


勝間和代さんは慶応義塾大学を卒業し、早稲田大学で金融のMBAを取得している。日本の公認会計士の最年少合格者(19歳)であり、複数の日本の外資系企業で働いた後、独立して経済評論家になった。エイボン女性大賞2006を受賞しており、2005年版ウォールストリートジャーナル「世界で注目すべき50人の女性」にも選ばれている。「お金は銀行に預けるな」を含む複数の書籍を執筆している。


講演なんですが時間が押していることもあり相当なスピードで行われました。パワーポイントを使った発表で、目で見、耳で聞いて、かなりの情報量が押し寄せまして、正直上手くまとめられないところが多くありました。前回同様シェアする目的で色をつけずに表現することを目指して記入していきますが、論理が飛躍している所があります。そこは僕の脳が目と耳のインプットと手のアウトプットの連携を上手くとれなかった箇所です。申し訳ない。


蛇足ですが、私見を少し。今回勝間さんは日本の社会について講演されました。日本の社会という中での女性への投資が意味するものとは、「教育を受ける権利」や「男性と同等の社会的制度への参加の権利の獲得」などではありません。僕自身この問題を考えたことがありまして、日本社会の女性活用の問題はこちらの表から類推できますように、「教育を受けた女性は多いが、その多くが必ずしも社会で活躍できていない」ということであると考えていました。講演では勝間さんがその点を踏まえた話をしてくださいまして、個人的にも実りの多い講演となりました。


また、「ダイバーシティ」という言葉が講演で出てきます。これは「多様性」という意味で、ここでは多様さを認め合う企業風土のことをさしています。育児を抱えた女性、介護を抱えた男性など個人的事情を抱えている人や宗教、国籍などの種々の人々の違いを認め合うことです。今後のグローバル社会で多種多様な地域で展開する企業活動において重要なものと考えられています。僕の理解なので興味のある方はご自身で検索なさってください。


2008/3/10 国際女性の日フォーラム 15:00〜
勝間和代 講演会
表題「社会で女性がいきいき活躍するために必要なこと」


本日は英語で行っても良いのですが、私のネイティブが日本語であり、本日会場に来られている方も8割近くが日本の方ですので、日本語で発表させて頂きます。


「女性と女児に投資する」と言っても見返りを予想できないと投資ができないですよね。本日はどう考えてどう行動すれば投資することになるのかという環境分析的な視点から説明させていただきたいと思います。


本日の内容はこのようになります


1:自己紹介
2:今、日本で起こっている少子高齢化
3:自立的な生き方「インディ」のすすめ
4:自由を手に入れるキャリアのヒント
5:明日から何ができるか


■自己紹介


なぜ、この講演で自己紹介をするのかというと、こういった講演の内容というのは大体が同じような内容に落ち着くんですね。そこで重要なのは講演の内容よりも「誰が」「どういう立場のどういう人が言ったのか」ということになります。そこに意味が見られるわけです。


私は子どもが3人いて、「ムギ畑」というサイトを運営していまして、働く女性の自助努力を助ける点を評価されてきました。こちらのサイトではですね、「子どもに白い靴下をはかせて幼稚園での扱いのされ方を測る」ですとか「保育のバイトをする時は立派な門構えの家にチラシを入れる」ですとか「うまくいく入園アピールの方法」などの声が集まっています。
また本を書いていますがこちらは累計で120万部になっています。


■今、日本で起こっている少子高齢化


日本はダイバーシティが進んでいないですね。例えば私が本を書いて店頭に並ぶとすると「今、話題の女性作家」というコーナーに並ぶんですね。男性では「今、話題の男性作家」というコーナーはなかったりする。こういう所を見ていると、日本というのはなにかというと「女性」とつけられる。女性であることが目立つ社会だと言えます。


ダイバーシティというのは社会が困らないと進まないんですね。ダイバーシティを推進するということは、制度に柔軟性を持たせるということです。それにはコストがかかりますね。画一的なやり方の方が上手くいっている時には効率がいいです。


すべての社会に言えることですが、環境変化というのが先に来て対応というのは5〜10年遅れるものです。それに早く適応した企業が生き残ることができます。今でいうと女性活用ができているかということですね。日本の場合は高等教育を受けた女性が1人目を生んで家庭へ入ってしまう。そして共働きでない分を男性が稼ぐ必要が生じ、男性は長時間労働をしワークライフバランスが大きく崩れるという形になります。


日本は出生数と死亡数では死亡数の方が多いので、放っておけば年間100万人ずつ人口が減っていきます。「日本は過密だから人が減るのは良いことだ」という意見がありますが、たとえば日本の人口が1億人になったとして、過去の1億人の時とは高齢者の割合が全く違います。高齢者の割合が増えると、働き手が減ることを表します。年金の問題もそうですが、医療や警察や福祉などこれまであって当然だと思っていたものが、これまでとは同じ値段では利用できなくなります。また、過密が解消されるわけではなく都市部の過密は依然として残り、地方は過疎化が進むという形になると考えられます。


「出生率を上げながら、女性を活用する」これが遠回りであるように思われながら、もっとも近い解だと思います。国民1人あたりのGDPと国民数で国の経済は決まってきますから、女性が働きながら子どもを産むというのが、遠回りのようでいて一番近い解だと思われます。


経済学から見た「子どもを持つメリット」というのがあります。ひとつは「消費効用」です。これは愛玩効果というもので、時代が変わっても不変ですね。次は「所得効用」というもので、こちらは若年労働が家庭で必要とされていない先進国では下がります。次に「年金効用」ですが、これは年金制度ができてしまって子どもに頼る必要がなくなってきているので必要性は下がります。以上3つです。
一方子育てのコストは上昇しています。住居と教育コストが上昇していますね。
つまり先進国は放っておくと少子化になるという原理が経済学では言われているわけですね。
晩婚化やライフスタイルの多様化というのは、効用変化の結果であり、原因ではないと言えます。


今は昔の「3高」ではなくて「3低」という指標があるみたいですね。3低っていうのは、「低依存、低リスク、低姿勢」ということで(会場笑)低依存というのは男性自身が経済的に自立しているということで、低リスクというのは所得が過度の変動しないなど、低姿勢というのは腰を低くということですね(笑)
これって全部女性が働くことを前提とした流れの旦那選びになってきているんですよ。
繰り返しますけど、少子高齢化を解決するには一言で言うと「働く母親を増やすしかない」ということです。


あと、日本の少子化の一つの要因は、ワーキングマザー向けの社会基盤が整っていないことにもあると考えられますね。例えば産後1、2ヶ月の母親がいるとして、フランスでは仕事していないと「なんで仕事しないの?」と言われるんですけど、日本で仕事していると「なんで仕事しているの?そんなにお金に困っているの?」といわれるんですね。社会の側にまだまだ意識的な壁があります。


また、日本の労働の特徴って「長時間労働」と「超時間通勤」です。同一職種同一賃金がない日本では非正規雇用と正規雇用があると、正規雇用が使い倒される傾向があります。「長時間労働しますか、非正規雇用になりますか」ということになり男性は結果的に家事に参加できない。結局働く時間がセブンイレブンで晩婚化ということになります。


女性も働いた方が企業の業績も伸びるんですが、ここに気づいているのは日本では外資系ですね。私22歳から16年間外資系で働いたんです。よく「なぜ?」って聞かれるんですけど、子持ちで働けるのが外資系しかなかったからですよ。最初には日本の企業で働いていたんですが、子どもができると「じゃあパートで働くんだね」ということになってしまいました。私は男女雇用機会均等法の走りなんですが、その当時でもそういう認識でしたね。


外資系がそういう女性を受け入れてくれたんですけど、そういう女性を雇用する外資系には忠誠心が生まれてよく働きますし、そうすれば結果として業績も良くなりますよね。あと、外資系は半休とか時間で休みが取れるんですよ。私は昔やっていましたが、7:30に出社していくらか仕事して、8:00に子どもを学校に連れていって、また会社に戻るということをやっていたことがあります。上司の方に了承してもらって。私は結果的に普通の人よりも5〜10%ぐらい多く会社を休んでいたと思いますが、それぐらいならば生産性を改善することで穴埋めをすることができる自信がありました。
つまり、制限のある女性を有効活用できる企業は、「安く買い物ができる」ということになりますね。子どものいる女性だけに限らず、「介護をしている男性」など多様な個人的事情を持った方はいらっしゃいますので、これからの時代そういった多様性を持った人を活用できる企業が伸びていくと思います。


■自立的な生き方「インディ」のすすめ


社会の側の意識の壁を述べてきましたけど、女性の側にも意識の壁があります。私は「インディ」な生き方ということで以下の生き方を進めてます。


年収600万を稼ぐことができる
いいパートナーがいる
年を取るほど素敵になる


ということですね。
年収600万円に拘るのは、それが家を借りて子どもを育てるというのに必要な額だからです。


■自由を手に入れるキャリアのヒント


ヒントとしては以下のものを上げさせていただきます


出世するため、収入を上げるにはどうしたらいいか
キャリアを積むための情報はどうやって得たら良いか
時間がない人が勉強するような方法はないか
今いる境遇ではできることに限界がある、どのように考えれば良いか
英語を学ぶことはどのくらいの意味があるのか


私の著作の中で勉強法や時間法についてはポッドキャストなどでスキマ時間を活用するであるとか、親指シフト、日本語のローマ字入力は遅いであるとか、書いておりますのでそれらは割愛します。
ひとつ年収のことで言えるのは、仕事を選ぶ入り口の時点で600万に届かない職を選ぶ女性がいますね。また、女性が仕事をする上では「英語を学ぶこと」は一つの解であると私は思っています。日本人って英語をほとんど話せない、話せても実務レベルで活用していくことができない人がほとんどです。ですから日本でも女性で英語が話せる人って貴重なんですね。英語がほとんど話せない人と話せる人の収入って大きく違いますよ。


働く女性の問題って「時間貧乏」であると私は言っています。そういう時間がない女性ですので必要以上に「いい人」にならない、ということをお勧めします。雑用を全て引き受けて「雑用のゴミ箱」みたいになってしまう女性がいます。そして長く働いた割には働いた分だけのお給料は貰えないということが起きていますね。


あと、これはかなり効く方法なので、お勧めなんですけど、仏教の「三毒」追放。なんでいきなり仏教なんだって話ですが(笑)「妬まない、怒らない、愚痴らない」この3つをひたすら実践することです。私はこれを2001年に紙に書いて机に張っていたんですが、とても効果がありました。この「妬まない、怒らない、愚痴らない」を心がけると気持ちが「問題解決」に向くんですね。で、こう考えているとポジティブ思考にもなるんですよ。
それとGIVEの5乗です。よく「ギブ&テイク」って言いますけど、それでは甘いんですね、もったいない。「恩は複利になって帰ってくる」って私は言っていますけど、ひたすら周りに恩を売っていくといいですよ。人間心理的に同じ人から2年ぐらい恩を売られていると、だんだん気持ち悪くなってきて返してあげようと思うものなんです(会場笑)
この「妬まない、怒らない、愚痴らない」と「GIVEの5乗」はかなり効きます。そして良い所はすぐに始められることと、無料ということです(笑)


■明日から何ができるか


明日からできることとして以下のことを提案しています。


1:Not to do List をつくる
働く女性はやることが多すぎるのが悩みです。圧倒的に時間が足りない。やることが多すぎるのにやること書いても仕方がない、やらないことを決めましょう。
2:依存薬物に手を出さない
これはアルコール、タバコ、カフェインなどのことですね。
3:テレビ、ネットを見る時間を減らし本を読む量を増やす
テレビとかネットにかける時間が多いです、それを減らして本を読みましょう。
4:英語ともう少し向き合ってみる
英語を学ぶことの効果は大きいと考えています、英語、学びましょう。
5:「無意識」の存在をもっともっと意識する
今日聞いたことは、明日、明後日の朝ぐらいになると7割ぐらいはどっかに行っちゃうんですね。でも何かは残っているんですよ。なんとなくこの場で聞いたことが、なにかのきっかけでシナプスがつながって思いだしたりする。そういうことがあるから、こういうことをどんどん貯めていくと役に立つ時が来ますよ。


自分でできるだけのことをやって、みんながハッピーになる世の中にしていきましょう!


■質疑応答


質問
若い時に働きがいを求めない、感じない女性が、40代50代になって働こうとしても参加するのがキツい現状がある、もっと働くことに若い時からコミットしていくべきとは思うが、そこのところはどう考えていますでしょうか?


回答
私が女性に言いたいことは、「フロントに出ることを恐れるな」ということです。企業の仕事にはフロントーミドルーバックとあります。バックは多くの女性が志望する裏方的な仕事ですが、ここでプロになるのはかなり険しい道です。ミドルはリスクマネジメントなどを担当する所。で、フロントは営業に相当しますが、ここは金が稼げる人間になれば、個人が評価されて生き残れます。40代50代60代でも金を稼げる人間であれば仕事があります。1人で生きていける、いつどこでも生きていけて、ITなどに代替されない能力を身につけるべきだと思います。
現状、このことは親も学校も教えられていない状態ですが。


質問
日本では女性が働こうと思っても、年齢制限というものが強いと感じます。それ自体が時代に遅れている制度だと思います。働く側にいくら熱意があっても年齢で一律的に切られてしまう現状があると思います。どうお考えでしょうか。


回答
子どもが3人いて離婚した女性がいてお話を聞いたんですが、その方は働ける場所を探したが2つしかなかった。ひとつはヤクルトレディーで、ひとつは生命保険のセールスレディーです。その方は生命保険のセールスレディーを選び研修を受け、ステップアップして弁護士事務所に転職し最終的には銀行の正社員になりました。この方の話を聞いて私が感動したのは、どこに入りたいかではなくて、「どこから入れるか」と逆算して良い仕事を狙っていったという点ですね。年齢関係なく就ける仕事はあります。まずは年齢制限を嘆くのではなくて、自分の年代で働ける先を見つけるという視点を持っていただきたいと思います。
もちろん、そういう年齢制限をなくしていくように、政府の委員会でも今後も発言していきたいと思っています。


*筆者注
最後の質問には外国の方が英語で質問し、勝間さんがもの凄い流暢な英語で回答されました。同時通訳者がうまく対応できておらずあまり訳せていませんでした。部分的な訳をつなぎ合わせて勝間さんの回答を理解しますと、「日本で外国人が上手くコミュニケーションできないと感じるのは、外国人だからというよりも英語が話せないという言語の問題があるように思う。ジェンダーの問題を感じてもそれはジェンダーの純粋な問題よりも、言語という問題の可能性があるように思う」ということを勝間さんはおっしゃっていたようです。ホント、早すぎて分かりませんでした、スイマセン‥。