新宿セミナー@Kinokuniya200回達成記念 新春特別企画 『ズルい仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『まじめの罠』(光文社) 出版記念 勝間和代 講演会 「あなたの仕事の目的は、まじめに努力をすることですか?それとも、付加価値を生み出すことですか?」(2012年1月10日)
僕は勝間さんの講演会は結構好きで、「講演会」タグにもまとめていますけど、この記事とかはご本人にブログで紹介していただいて、アクセスが伸びたりしました(当時はココログでした)。
勝間さんのことですから、この記事も読まれていると思いますので、多少緊張してしまいます。
今回の勝間さんの講演会は『まじめの罠』と『ズルい仕事術』の2冊の行間をお話ししていただいた講演会といった感じでした。
冒頭にディスカバーの干場社長との対談があって、その中で勝間さんが今回の2冊を
「クオリティ的には数年前よりよほど良い」「ビジネス本としての集大成」
とおっしゃっていた通り、勝間さんの著作の中で抜群のクオリティだと私も思っています。
勝間さん初期のビジネス書も個人的には新鮮さを失わず心の中に残っているのですが、世の中的には仕事効率化もフレームワーク系の話題も後追いのコンサル出身の著者達が乱発し過ぎていて新鮮さが失われてしまった感があります。
僕は某コンサルタントに対面で「勝間氏の言ってることはコンサルなら誰でも知っている、あんなもんでもうけやがって」と言われたことがあります。
コンサル業界で囲い込んでいたことを一番最初に世に共有して「MECE」などを知らしめてビジネス社会を底上げした功績は大きいと思うのですが、そこら編は考慮する余裕なく悔しかったんだと思うんですよね、「勝間和代、ズルい!」って(笑)
脱線しましたが講演会の話。
僕が『ズルい仕事術』を読んで最も感動した点は、今まさに自分が実行しようと試行錯誤している「抜けるところは抜く」仕事術の内容と心構えが書かれていることでした。
職場と取引先を見るかぎり、多くの人が「周りに素直に影響を受けすぎる」結果、非常に非効率なことを愚直に愚直にやり続けていて、その疲弊の結果として幸せそうになっていないという現象がありました。
必ずしも当該分野に詳しくない上司の思いつきを真に受けて、遅くまで連日残業をし最終的に顧客からの反応が薄い質の低いサイトができたりしていて、完成品を見た上司も「まさか俺の言うこと全部真に受けたのか」という顔しているという救えない話、それに類する話が結構ありました。
周りを観察した結果「上司のことは絶対命令で、それに従う姿勢を見せることが仕事」という「自分の判断が入らない手足だけ動かす自動運転」を許容してしまう人が勝間さんいうところの「まじめの罠」にハマっているように見えました。
そういった仕事のやり方とは完全に差別化を図るために「抜けるところは抜く」を行動指針とし、その実行目標として以下の目標を掲げました。
①できうる限り定時退社
②1週間以上の連続休暇の取得
ちなみに、以下の結果で現在ほぼ達成することができました。
①→23年度の残業は合計3時間だけ
②→12月ハワイ旅行(ホノルルマラソン)のため10日間の有給休暇を達成
上記が達成できたのも「抜けるところは抜く仕事術」を日々自分の頭で考えて実施したからだと思っています。
しかし悲しいかな『ズルい仕事術』にある通り、ズルい人(若いのに上司より先に毎日平然と帰る人、連続休暇を12月に空気読まずに取ってしまう人)というのは周囲から疎まれますね。
その事実は悲しいところですが、それを補って余りある気づきや学び、また趣味のマラソンで100キロマラソンに挑戦(2012年6月)できるだけの自信を平日の夜の練習により得られたことは嬉しい限りです。
さて、その指針となった「抜けるところは抜く」という言葉ですが、こちらは僕のオリジナルではなく、加藤嘉一さんの講演会で聞いた言葉を記憶したものです。
該当する部分を抜き出しますと、
『われ日本海の橋とならん』刊行記念 加藤嘉一 講演会 まとめ(後編)
中国人が「うまくやっている」のが、日本や世界だと違法だったりする。
中国人はぬるい人たちからは、取る。
日本人はある意味「バカ正直」と言える。
それは「反日」という訳ではなく、「抜けるところは抜く」「だませるところはだます」というのがまだまだ中国にはあるから。
その点、アメリカ人は「うまくやっている」。
欧米は先にだます、ということをしていたりする。
日本はモラルを気にしてしまっている現実がある。
日本人はビジネスをする上で無意識に「規範」というのがチラついてしまい、強制されなくても自らそれに縛られる傾向があり、それをしていない中国に上手く出し抜かれているという話でした。
(中国の法的な意識が欠けていること点については手放しで賞賛できる点ではありませんが‥)
この話は僕の心の中に妙に響いて、「抜けるところは抜く」という絶妙なキーワードと共に深く心に刻まれました。
「日本人はどうも『まじめ』すぎて世界では損ばかりするのではないか」→「現在の職場でも勝手に周囲の空気を読んで縛られているから生産性が上がらずにストレスが溜まっているのではないか」
と思考が発展しまして、「強制的に定時に帰るように決めて仕事を組み直そう」「連続休暇が取れるぐらい自分の仕事をオープンにしよう」という上記2つの目標につながっていったのです。
勝間さんは別の著作でも『ズルい仕事術』に類することは書かれていますし、ワークライフバランスについても書かれていて、そこの知識もベースにあった上での上記の目標設定でした。
効率化の方法論の基礎やフレームワークなどは勝間さんの過去の書籍が役に立ちましたよ。
リスクとして考慮していた「周囲から疎まれる」という人によっては耐えられない副産物を手に入れてしまいましたが、役職なしのプレイヤーでここまで自由が謳歌できると個人的には大成功です。
連続休暇がマイナスの印象になる組織は健全ではありませんので、私はできうる限り出世して社内で後輩の「連続休暇を取得しても出世できる」ロールモデルになろうと密かに決めています。
個人的なことをズラズラ書いてしまいました。
最後に『ズルい仕事術』を読む前後で読んだ書籍が偶然関連するものでしたのでご紹介して締めくくりたいと思います。
仕事をしたつもり (星海社新書)
こちらの著作には、「まじめに仕事をしているつもりでも効果を挙げていない」事例が載っています。
面白くて勢いよく一気に読みました。「量の神話」「ハコモノ思考」等、納得してしまう話が盛りだくさん。過剰品質についての指摘も含め勝間さんの『ズルい仕事術』に共通する内容と感じます。
武器としての決断思考 (星海社新書)
「知識・判断・行動」の3つをつなげて考える、などのその時の最善解を見つけ出す決断思考を身につければ、考える習慣から「まじめの罠」にハマらない思考をすることができると感じます。
インプットか、それともアウトプットか
こちらの記事では、ライフネットの出口社長とちきりんさんの「インプット」と「アウトプット」のどちらを重視するかという点についての考察。『ズルい仕事術』では「Output - Input」の結果を「付加価値」として捉えるのではなく、「とにかくInputすればOutputが良くなるはず」という考えが「まじめ病」を促進していると冒頭で書かれています。
「とにかくインプットを徹底せよ」という出口さんの考えは、その「まじめ病」の考えそのものなのですが、その考えで出口さんが成功した理由を「時代」「立場」「場所」から分析しています。
僕は出口さんをロールモデルとして尊敬していますし、そのいうことには一理ありますので、勝間さんの話とミックスさせてさらに考えるとより深く味わえる気がします。
(ちきりんさんの『自分のアタマで考えよう』は講演会を聞きましたが未読なのです‥、その内容も勝間さんの主張と比較してみたいですね)